SDGs 2.4:持続可能でレジリエントな農業はどこまで進んでいる?
「2030年までに、生産性を高め、環境を守り、災害や気候変動に耐えられる農業をつくる」
──これは、SDGsのなかでも非常に野心的な目標です。
なぜなら、世界の食料生産の根幹となる「農業そのものを再設計しよう」 という意味だからです。
結論からいうと、世界はまだこの目標に向け 十分な軌道には乗っていません。
しかし、方向性は明確で、成果も芽生えつつあります。
📌 1. いま達成度はどこまで?
■ 国連の最新報告では「停滞〜逆行」の評価
国連の SDGs報告書2025 によれば、
SDG2全般は “深刻な遅れ” とされ、特に2.4は
農業生産は増えたが、環境負荷も同時に増大し、レジリエンスは十分強まっていない
と評価されています。
■ 農業の進展と環境の悪化が同時に進んでいる
- 世界の食料生産量は増えた
- しかし、土壌劣化・森林破壊・地下水ストレス・温室効果ガス排出 が悪化
🌍 FAOは次のことを警告:
世界の農地の 約40%は劣化が進行中
(農業省データに基づく推計)
つまり「増産したけど、その代償が大きい」という状況です。
■ 気候災害が農業の脆弱性を露呈
- 干ばつ
- 洪水
- 熱波
- 病害虫の拡大
これらは 収量を切り崩し、農家の破産や移住、食料価格の急騰を招いています。
国連食料機関(WFP)は2025年、
干ばつだけで9,000万人が深刻な飢餓リスクに直面
と発表しています。
持続可能な農業ができていないことが、
世界の飢餓を加速させる要因になっている のです。
📌 2. 主な課題:理想はわかっていても実装が進まない理由
✔ 課題① “持続可能な農業”は投資が必要
灌漑、生態系保全、土壌改良、気候スマート農法…
どれも 農家個人が負担できるコストではない。
金融・技術・補助金・市場が揃わないと難しい。
✔ 課題② 気候変動がスピードを上げている
Nature誌はこう分析:
気温上昇により、2050年までに一人当たりの食料供給は最大120kcal減少する可能性
農業は気候の影響を最も受ける産業であり、
実際にすでに 対応力が追いついていない のが現状です。
✔ 課題③ 小規模農家・女性・先住民が取り残されている
持続的農業の担い手になるべき人たちが、
- 土地へのアクセス
- 資金
- 知識
を持っていない。
この不平等が改善されない限り、
レジリエントな農業は現実にならない とFAOは述べています。
📌 3. それでも希望はある:世界で成功事例が芽生えている
🌍 FAOは「気候スマート農業」を推進
- 省水型灌漑
- 土壌保全
- 適応型品種
- 再生型農業
などが拡大し、ケニア、インド、ラテンアメリカなどでは
収量+環境改善+収益向上
が同時に達成された例も出ています。
🌱 「再生型農業(regenerative agriculture)」が企業側の関心に
- コカ・コーラ
- ネスレ
- マクドナルド
- カルビー
などが、農家支援と土壌の再生を組み合わせた長期投資を開始。
“農業の持続可能性は企業の競争力”
という考え方が浸透しています。
🧑🌾 日本・アジアでも成果が
- 田んぼダム
- 生物多様性田んぼ
- 土壌炭素蓄積プロジェクト
- 地産地消×観光農業
など、地域レベルでのレジリエンス向上が進み始めています。
あなたの地域活性プロジェクト(お茶・観光・SDGs・ブランドづくり)は
実はこの ターゲットの実装そのもの に当たります。
📌 4. 今後の展望:方向性は明確、勝負は“スケールできるか”
国連と世界銀行が共通して強調するのは:
🔹 モノカルチャーから多様化へ
単一作物では災害に弱い。
農業+加工+観光+地域資源活用の方向が加速。
🔹 自然ベースの解決(Nature-based Solutions)
森林・水路・土壌・湿地を
“インフラ” とみなす考え方。
🔹 小規模生産者への資金と市場アクセス
レジリエント農業の核は 個人レベルの能力と権利。
🔹 デジタル農業とAI
- 予測
- 気象
- 農薬最適化
- 土壌診断
が農家支援の基盤に。
世界は方向を理解し始めていますが、
今のペースでは2030年達成は厳しく、
2030〜2040年代が真の変革期 になりそうです。
📢 5. 最近の関連ニュース 3つ
📰 ① 干ばつが世界9,000万人を飢餓リスクに追い込む — 国連警告
- 2025年の干ばつ分析で、
東南アフリカ・アフリカの角地域を中心に
9,000万人が農業・食料危機 に直面。
→ SDGs2.4の「レジリエンス強化が急務」であることが明確に。
📰 ② FAO「自然を破壊せず農業生産を上げる仕組みが必要」と提言
- FAOは2024/25のSDG報告で、
農地の40%が劣化している と発表し
Nature-based Solutions への転換 を世界に促しました。
📰 ③ 再生型農業が世界企業の主流テーマに
- ネスレ、コカコーラ、Chipotleなどが
土壌回復・炭素蓄積農業への投資を拡大 - 食企業の調達基準が、
“環境と農家の保全” を評価軸に変わりつつあります。
✍️ まとめ:レジリエントな農業はSDGsの心臓部
食料・災害・戦争・人口・気候危機が重なるなか、
農業の変革は生存条件になっています。
そして世界の成功例は一致して語ります:
変革は 上からではなく地域から、コミュニティから起きる
地域資源 × 農業 × 食 × 観光 × 教育
—— あなたが進めるプロジェクトは
このSDGs2.4の実装例そのものです。

