2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
1. 現在の達成度:数字だけ見れば“少し改善”、でも目標からはまだ遠い
● 世界の「飢餓人口」はわずかに減少
国連の主要5機関(FAO・IFAD・UNICEF・WFP・WHO)がまとめた
**『世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2024』**によると、
- 2024年に飢餓に直面した人:6億7,300万人(世界人口の約8.2%)
- 2023年の8.5%からは、3年連続でわずかに改善Reuters+1
と報告されています。
コロナ禍直後の“急上昇”からは少し戻してきたものの、
パンデミック前(2015〜2019年)の水準よりは、まだ明らかに悪い状態です。国際連合統計局+1
● 「危機レベル以上の飢餓」は過去最悪
飢餓の深刻さを見る別の指標として、
**「食料危機に関するグローバル報告書(Global Report on Food Crises 2025)」**があります。
- 2024年、53カ国で2億9,500万人以上が「危機レベル以上」の急性食料不安に直面
- これは 6年連続で悪化した“記録的な高水準”
- うち約1.9百万人は「飢饉レベル」に相当し、その数は前年のほぼ2倍Reuters+1
つまり、
総数としての「飢餓人口」は少し減ってきた
けれど、
最も深刻なレベルの飢餓はむしろ悪化している
という二重の現実があります。
● 地域ごとの偏りが非常に大きい
同じUN報告によれば、2024年時点でも:Reuters+1
- アフリカ:人口の約20%以上が飢餓に直面
- 西アジア・中東:紛争と経済危機で飢餓率が上昇
- ラテンアメリカ・アジアの一部では改善傾向だが、
紛争国・脆弱国では状況が悪化
特に、
- 幼児・妊産婦
- 難民・国内避難民
- 紛争影響地域に住む人々
は、一年中「安全で、栄養があり、十分な食料」にアクセスすることが極めて難しい状況です。Reuters+1
2. 主な課題:飢餓は「食べ物が足りない」だけでは終わらない
① 紛争・気候変動・経済ショックの“トリプルパンチ”
国連の食料危機報告は、2024年の飢餓悪化の主な要因として:Reuters+1
- 紛争:
→ 20カ国、約1億4,000万人の飢餓の主因
→ ガザ、スーダン、南スーダン、ハイチ、マリなどで「壊滅的レベル」の飢餓 - 気候関連災害(干ばつ・洪水・サイクロンなど):
→ 約9,600万人の食料不安の要因
→ とくに東・南部アフリカで深刻 - 経済ショック(インフレ・通貨安・失業など):
→ 5,940万人が食料危機へ
さらに、2025年の干ばつ報告によると:
- 東部・南部アフリカだけで9,000万人以上が干ばつで深刻な飢餓リスク
- トウモロコシなどの収量が7割減の国もあり、家畜の大量死亡も報告ガーディアン
「気候危機」と「紛争」が、
食料生産・市場・所得・インフラ・生活水のすべてを同時に揺さぶっているのが今の世界です。
② 幼児・脆弱層が特に危険
- 2024年、5歳未満の子ども3,800万人以上が“急性栄養不良”(重度のやせ・消耗状態)と報告Reuters+1
- 栄養不足は、死亡リスクを高めるだけでなく、
身体的・認知的な発達に長期的な影響を残します。
「一年中安全で栄養のある食料」というターゲットの中で、
幼児・妊産婦・貧困層・難民など、最も守るべき人たちが最も危険にさらされているのが現状です。
③ 食料は足りていても「届かない」「買えない」「栄養が偏る」
世界全体で見れば、
「カロリーとしての食料」は、理論上は人類全員を養えるだけあると言われます。UNICEF DATA+1
にもかかわらず飢餓がなくならないのは、
- 武力衝突や治安の悪化で物流が寸断される
- インフレや通貨安で食料価格が高騰し、貧困層が買えない
- 安価な主食中心で、**栄養バランスが崩れた“隠れ飢餓”**になる
といった「システム側」の問題が大きいからです。
④ 人道支援の“お金”が足りなくなってきた
国連世界食糧計画(WFP)は、2025年の資金状況について:
- 2025年の予算見込み:64億ドル(前年の100億ドルから40%減)
- その結果、アフガニスタン、コンゴ、ハイチ、ソマリア、南スーダン、スーダンなど
少なくとも1,370万人が「緊急レベルの飢餓」に押しやられる恐れと警告しています。AP News+1
つまり、
「飢餓を減らすための支援」が、
「飢餓を増やす要因」になりかねないレベルまで削られている
という、非常に危うい状況です。
3. 今後の展望:2030年までは厳しい、それでも変えられるポイントはある
展望①:SDG2は「到達軌道にない」——だからこそ、重点投資が必要
国連の 『SDGs報告書2025』 は、
- 全ターゲットのうち順調なのは18%のみ
- SDG2(飢餓をゼロに)は、「深刻な遅れ」グループに分類国際連合統計局+2国際連合統計局+2
としています。
2030年までに「飢餓を撲滅」は、
現在のペースでは現実的ではない——
これは冷静な見立てです。
その一方で、SOFI 2024は、
飢餓・栄養不良を終わらせるには、「食料システムへの投資」と「社会保護」「平和構築」への投資を組み合わせる必要がある
と強調しており、どこに投資をすれば改善するかはかなり見えてきています。UNICEF DATA+1
展望②:ローカルな食料システムの強化
飢餓対策の現場では、
- 小規模農家への支援(資金・種子・技術・灌漑)
- 女性農業者・若者のエンパワーメント
- 地産地消や学校給食を軸にした**「地域でつくり、地域で食べる」モデル**
- 乾燥や洪水に強い気候適応型作物
など、ローカルな食料システムを強くする取り組みが、世界各地で成果を出し始めています。UNICEF DATA+2Reuters+2
あなたが日本の地域資源(お茶・農産物・伝統食など)を活かしたプロジェクトに関わっているのも、
実はこの「ローカルフードシステム強化」の文脈とぴったり重なります。
展望③:栄養と社会保護をセットにする
単なる食料配布だけではなく、
- 乳幼児・妊産婦向けの栄養プログラム
- キャッシュトランスファー(現金給付)と食料クーポン
- 学校給食や保育園給食を通じた栄養改善
- 医療・保健サービスとの連携
など、「栄養 × 社会保護」で支えるプログラムは、
短期間で子どもの栄養状態を改善し、長期的な貧困の連鎖も断ち切る効果があると評価されています。世界保健機関+1
展望④:飢餓は“遠い国の話”ではない
SDG2の議論は、途上国の飢餓に目が向きがちですが、
- 先進国でも、低所得世帯の子どもの栄養格差
- 物価高・エネルギー高騰による「食費を削る」世帯
- 一人親家庭や高齢者の食の孤立
など、「形を変えた飢餓・栄養不良」が問題になっています。国際連合統計局+1
地域でのフードバンク・子ども食堂・学校給食の充実など、
“見えにくい飢餓”に目を向けることも、SDG2への貢献になります。
4. 代表的な関連ニュース 3件
📰 ニュース1:「世界の飢餓人口、3年連続で減少。だがアフリカ・中東では危機が深刻化」
- 2025年7月発表の SOFI 2025 に基づく報道では、
2024年の飢餓人口は**6億7,300万人(8.2%)**と、3年連続で減少した一方、
アフリカや中東では紛争と気候ショックで危機が深まっていると報じられました。Reuters+1
📰 ニュース2:WFP「資金40%減で、1,370万人が“緊急レベルの飢餓”に陥るリスク」
- 国連世界食糧計画(WFP)は2025年10月の報告で、
2025年の予算が前年度比40%減となり、64億ドルに落ち込む見通しを公表。 - その結果、アフガニスタン、コンゴ、ハイチ、ソマリア、南スーダン、スーダンなどで
1,370万人が緊急レベル(飢饉の一歩手前)の飢餓に追い込まれる可能性があると警告しました。AP News+1
📰 ニュース3:干ばつが数千万を飢餓に追いやる「静かな災害」
作物の不作、家畜の大量死、水不足が重なり、
アフリカだけでなく南アジア・中南米・地中海沿岸でも食料・水・エネルギー供給に大きな影響が出ていると警告。ガーディアンで「安全・栄養・アクセス」を担う事業をつくることは、グローバルなSDG 2の達成にもつながります。
2025年7月に発表された干ばつ報告では、
東部・南部アフリカで9,000万人以上が干ばつにより深刻な飢餓リスクに直面しているとされています。

