開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
開発途上国の農業生産能力をどう高めるか
――SDGsターゲット2.a「農業投資と国際協力」の現在地とこれから



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世界の飢餓人口は再び増加傾向にあり、その中心にあるのが**開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)**の農業生産力の低さです。
SDGsターゲット2.aは、こうした国々の農業基盤を強化するために、
- 農村インフラ
- 農業研究・普及サービス
- 技術開発
- 植物・家畜のジーン・バンク
への投資を、国際協力を通じて拡大することを掲げています。
今回は、このターゲットについて
**「現在の状況」「直面する課題」「今後の対策」**を整理してみます。
現在の状況|投資は進むが、十分とは言えない
■ 農業は途上国経済の中核
後発開発途上国では、
- 就業人口の60〜70%以上が農業関連
- GDPの大きな割合を農業が占める
国も少なくありません。
つまり、農業生産能力の向上=貧困削減・雇用創出・食料安全保障の同時達成につながります。
■ 国際支援は継続している
国際的には、
- FAO(国連食糧農業機関)
- IFAD(国際農業開発基金)
- World Bank
- UNDP
などが中心となり、
- 灌漑整備
- 農道・倉庫・市場整備
- 研究機関の支援
- 小規模農家向け技術普及
が進められてきました。
また、近年は**ジーン・バンク(遺伝資源保存施設)**への投資も強化され、
- 干ばつ耐性作物
- 病害虫に強い品種
- 在来家畜品種
などを将来に残す取り組みが拡大しています。
それでも残る3つの大きな課題
課題①|農村インフラの絶対的不足
多くの後発開発途上国では、
- 灌漑施設が未整備
- 農道が悪く市場に出荷できない
- 電力・冷蔵設備がなく収穫後ロスが30〜40%
という状況が続いています。
👉 生産以前に「流通以前で失われる」構造が最大の壁です。
課題②|研究成果が農家に届かない
農業研究自体は行われていても、
- 普及員(エクステンションワーカー)が不足
- 農家への研修が限定的
- 女性農家や小規模農家が支援対象から漏れる
といった問題が多く見られます。
結果として、
「研究はあるが、現場は変わらない」
という断絶が生じています。
課題③|ジーン・バンク投資の偏在
ジーン・バンクは重要である一方、
- 先進国に集中しやすい
- 途上国自身の管理能力・人材が不足
- 保存しても“使える品種”として評価されていない
という課題があります。
単なる保存ではなく、
現地農業に活かせる遺伝資源循環が十分に機能していません。
今後の対策|「投資の質」を変えることが鍵
対策①|インフラ投資を“農村起点”で設計する
今後重要なのは、
- 大規模国家プロジェクトだけでなく
- 村単位・地域単位の小規模インフラ
への投資です。
例:
- 小規模太陽光灌漑
- 簡易貯蔵庫・低温保管
- デジタル市場アクセス(スマホ流通)
これにより、生産・加工・販売までを一体化できます。
対策②|普及サービスを「人×デジタル」で強化
今後の農業普及は、
- 現地普及員の育成
- スマートフォンによる動画指導
- AI・気象データを活用した営農支援
などの組み合わせが不可欠です。
特に、
- 若者
- 女性農家
を担い手として育てることが、農業の持続性を大きく左右します。
対策③|ジーン・バンクを“生きた投資”にする
遺伝資源投資は、
- 保存(守る)
- 評価(特性解析)
- 活用(育種・現場導入)
まで一貫して行うことが重要です。
さらに、
- 地域在来品種の価値化
- 気候変動適応作物の共同研究
- 南南協力(途上国間連携)
を進めることで、自立型農業発展につながります。
国際協力のこれから|「支援」から「共創」へ
これからの国際協力は、
❌ 一方的な技術移転
ではなく、
✅ 現地と共につくる農業システム
が求められます。
- 現地の知恵 × 科学技術
- 伝統品種 × 最新育種
- 小規模農家 × デジタル技術
この融合こそが、気候変動時代の農業レジリエンスを高めます。
まとめ|農業投資は「未来への平和投資」
SDGsターゲット2.aが目指すのは、単なる農業支援ではありません。
- 飢餓の根本解決
- 貧困削減
- 若者雇用の創出
- 紛争予防
- 気候変動への適応
すべてにつながる未来への平和投資です。
農村インフラ、研究、技術、ジーン・バンク――
これらへの戦略的投資を、国際社会が「点」ではなく「面」で進められるか。
その成否が、2030年以降の世界の安定を左右すると言えるでしょう。

