開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。

開発途上国の農業生産能力をどう高めるか

――SDGsターゲット2.a「農業投資と国際協力」の現在地とこれから

https://blogs.worldbank.org/content/dam/sites/blogs/img/detail/mgr/jason_florio-1140x500.jpg
https://i.guim.co.uk/img/static/sys-images/Environment/Pix/pictures/2013/10/22/1382441601353/Farmers--008.jpg?crop=none&dpr=1&s=none&width=465
https://trainingcred.com/static/media/course-banners/Agricultural_Extension_Services_Training_Course_UEKnqiC.jpg

5

世界の飢餓人口は再び増加傾向にあり、その中心にあるのが**開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)**の農業生産力の低さです。
SDGsターゲット2.aは、こうした国々の農業基盤を強化するために、

  • 農村インフラ
  • 農業研究・普及サービス
  • 技術開発
  • 植物・家畜のジーン・バンク

への投資を、国際協力を通じて拡大することを掲げています。

今回は、このターゲットについて
**「現在の状況」「直面する課題」「今後の対策」**を整理してみます。


現在の状況|投資は進むが、十分とは言えない

■ 農業は途上国経済の中核

後発開発途上国では、

  • 就業人口の60〜70%以上が農業関連
  • GDPの大きな割合を農業が占める

国も少なくありません。

つまり、農業生産能力の向上=貧困削減・雇用創出・食料安全保障の同時達成につながります。


■ 国際支援は継続している

国際的には、

  • FAO(国連食糧農業機関)
  • IFAD(国際農業開発基金)
  • World Bank
  • UNDP

などが中心となり、

  • 灌漑整備
  • 農道・倉庫・市場整備
  • 研究機関の支援
  • 小規模農家向け技術普及

が進められてきました。

また、近年は**ジーン・バンク(遺伝資源保存施設)**への投資も強化され、

  • 干ばつ耐性作物
  • 病害虫に強い品種
  • 在来家畜品種

などを将来に残す取り組みが拡大しています。


それでも残る3つの大きな課題

課題①|農村インフラの絶対的不足

多くの後発開発途上国では、

  • 灌漑施設が未整備
  • 農道が悪く市場に出荷できない
  • 電力・冷蔵設備がなく収穫後ロスが30〜40%

という状況が続いています。

👉 生産以前に「流通以前で失われる」構造が最大の壁です。


課題②|研究成果が農家に届かない

農業研究自体は行われていても、

  • 普及員(エクステンションワーカー)が不足
  • 農家への研修が限定的
  • 女性農家や小規模農家が支援対象から漏れる

といった問題が多く見られます。

結果として、

「研究はあるが、現場は変わらない」

という断絶が生じています。


課題③|ジーン・バンク投資の偏在

ジーン・バンクは重要である一方、

  • 先進国に集中しやすい
  • 途上国自身の管理能力・人材が不足
  • 保存しても“使える品種”として評価されていない

という課題があります。

単なる保存ではなく、
現地農業に活かせる遺伝資源循環が十分に機能していません。


今後の対策|「投資の質」を変えることが鍵

対策①|インフラ投資を“農村起点”で設計する

今後重要なのは、

  • 大規模国家プロジェクトだけでなく
  • 村単位・地域単位の小規模インフラ

への投資です。

例:

  • 小規模太陽光灌漑
  • 簡易貯蔵庫・低温保管
  • デジタル市場アクセス(スマホ流通)

これにより、生産・加工・販売までを一体化できます。


対策②|普及サービスを「人×デジタル」で強化

今後の農業普及は、

  • 現地普及員の育成
  • スマートフォンによる動画指導
  • AI・気象データを活用した営農支援

などの組み合わせが不可欠です。

特に、

  • 若者
  • 女性農家

を担い手として育てることが、農業の持続性を大きく左右します。


対策③|ジーン・バンクを“生きた投資”にする

遺伝資源投資は、

  • 保存(守る)
  • 評価(特性解析)
  • 活用(育種・現場導入)

まで一貫して行うことが重要です。

さらに、

  • 地域在来品種の価値化
  • 気候変動適応作物の共同研究
  • 南南協力(途上国間連携)

を進めることで、自立型農業発展につながります。


国際協力のこれから|「支援」から「共創」へ

これからの国際協力は、

❌ 一方的な技術移転
ではなく、
現地と共につくる農業システム

が求められます。

  • 現地の知恵 × 科学技術
  • 伝統品種 × 最新育種
  • 小規模農家 × デジタル技術

この融合こそが、気候変動時代の農業レジリエンスを高めます。


まとめ|農業投資は「未来への平和投資」

SDGsターゲット2.aが目指すのは、単なる農業支援ではありません。

  • 飢餓の根本解決
  • 貧困削減
  • 若者雇用の創出
  • 紛争予防
  • 気候変動への適応

すべてにつながる未来への平和投資です。

農村インフラ、研究、技術、ジーン・バンク――
これらへの戦略的投資を、国際社会が「点」ではなく「面」で進められるか。

その成否が、2030年以降の世界の安定を左右すると言えるでしょう。